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資料問題⑬

資料問題⑬:自由民権運動と立憲国家の成立(データ分析版)

1. 「武士」の失業と経済的困窮

明治維新により特権を奪われた士族(元武士)たちは、経済的に追い詰められ、やがて西南戦争などの反乱を起こした。次の【資料1】【資料2】のデータから、彼らが直面した厳しい現実を分析しなさい。

【資料1】士族に与えられた「金禄公債」の価値変動

生活可能ライン 実質的な価値 物価 西南戦争(1877)後のインフレで価値激減

【資料2】「士族の商法」の失敗率

士族の商法:
武士が慣れない商売に手を出して失敗すること。

  • 成功: 約 10%
  • 失敗・破産: 約 90%

プライドが高く客に頭を下げられない、計算ができない等の理由で多くが財産を失った。

難易度:★★☆☆☆

問1 【資料1】【資料2】から読み取れる、不平士族が政府に対して武力反乱(西南戦争など)を起こした経済的な背景として、最も適切な記述を選びなさい。

【正解:②】

解説: 政府は財政難を解消するため、武士への給与(家禄)を廃止し、一時金として「金禄公債」を渡しました(秩禄処分)。しかし、その後のインフレで公債の実質価値は暴落。商売にも失敗した多くの士族は食うや食わずの状況に追い込まれ、その不満が武力反乱へと爆発しました。


2. 誰が国会を求めたのか?

自由民権運動は当初、士族が中心だったが、やがて農村の「豪農(豊かな農民)」たちが主役となっていった。なぜ農民が政治参加を求めたのか。次の【資料3】【資料4】からその理由を分析しなさい。

【資料3】明治初期の国家歳入(収入)の内訳

■ 地租 (約80%) (土地にかかる税金) ※主に農民が負担 ■ その他 (関税等)

【資料4】当時の民権派のスローガン

「代表なければ課税なし」

意味:
我々は重い税金(地租)を払っている。
なのに、その使い道を決める「国会」に参加できないのはおかしい!
難易度:★★★☆☆

問2 【資料3】【資料4】から読み取れる、豪農たちが自由民権運動に熱心に参加した最大の動機として、最も適切なものを選びなさい。

【正解:②】

解説: 明治初期の国家財政は、農民が払う「地租」によって支えられていました(資料3)。「金は出すが口は出せない」という状況に対し、納税者としての権利を主張し、地租の軽減や国政参加を求めたのが、農村部での民権運動の原動力でした。


3. なぜ「ドイツ(プロイセン)」を真似たのか?

伊藤博文は憲法制定にあたり、イギリスやフランスではなく、プロイセン(ドイツ)の憲法をモデルに選んだ。次の【資料5】【資料6】を比較し、その政治的意図を考察しなさい。

【資料5】2つの憲法モデルの比較

イギリス型 議会 政府(内閣) 「政府は議会に従う」 プロイセン型 君主(皇帝) 政府(内閣) 議会 「政府は君主に従う」 (議会は無視できる)

【資料6】伊藤博文の考え

「民権派の言う通りにイギリス流の憲法を作れば、政府は常に議会の顔色を伺わなければならなくなる。 天皇の権限を強く残し、政府が議会に縛られずに政治を行える仕組み(超然主義)が必要だ。

難易度:★★★★☆

問3 伊藤博文がプロイセン憲法をモデルに採用した理由について、【資料5】【資料6】の内容を踏まえて論理的に説明した記述を選びなさい。

【正解:②】

解説: 自由民権運動が激化する中、伊藤博文は「議会の力が強くなりすぎて、政府が思うように動けなくなること」を最も恐れました。そこで、君主権が強く、政府が議会に対して責任を負わない(超然主義)プロイセン型の憲法を導入し、藩閥政府の権力を守ろうとしました。


4. 天皇主権の抜け穴:なぜ「民党」は戦えたのか

明治憲法は天皇と政府に強大な権限を与えたはずだった。しかし、初期議会では「民党(民権派の政党)」が政府を追い詰め、予算を削減させることに成功している。なぜそんなことが可能だったのか? 憲法に隠された「ある条文」の効力を解き明かしなさい。

【資料7】大日本帝国憲法 第六十四条(予算)

「国家の歳出歳入(予算)は、帝国議会の協賛(同意)を経るべし」

※もし議会が新しい予算を認めない(否決する)場合、政府は「前年度の予算」をそのまま実行しなければならない(第七十一条)。

【資料8】政府のやりたかったこと

前年予算 100億円 軍備増強したい! 150億円 議会が 「否決」 すると…

予算が増やせない = 軍艦が買えない!

難易度:★★★★★★★(超難問)

問4(思考力) 明治憲法下において、なぜ「議会の同意(協賛)」が政府にとって無視できない強力な武器となったのか。【資料7】【資料8】の仕組みに基づき、その論理的理由として最も正確な記述を選びなさい。

【正解:②】

解説(超重要):
1. 政府の弱点: 日清戦争などに備えて「軍備を増やしたい(予算増額)」政府にとって、前年と同じ予算(据え置き)では目的が達成できません。
2. 議会の武器: 憲法64条・71条の規定により、議会が「NO」と言えば予算は増えません。
3. 妥協の産物: これにより、政府は「軍艦を買う予算を通してほしければ、地租を下げろ」という民党の要求を聞かざるを得なくなり、結果として議会政治が機能し始めました。

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この記事を書いた人

旧ブログ『Mr.ガジェットの日記』をBloggerで立ち上げ、その後当ブログ『ミスターガジェット』を創設。
Twitterのフォロワーは2500人を突破。
紅白出場経験のあるミリオンシンガー小野正利氏に師事するなど音楽活動にも力をいれている。

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