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資料問題⑥

資料問題⑥:近代ヨーロッパの覇権と矛盾

1. 産業革命の光と影

19世紀イギリスで起きた産業革命は、経済を飛躍的に成長させた一方で、人々の生活に複雑な影響を与えた。次の【資料1】【資料2】を読み、当時の実態を分析しなさい。

【資料1】経済成長と人々の体格(イギリス)

一人当たりGDP (経済的な豊かさ) 平均身長 (栄養・健康状態) 1750 1800 1850 1900 ※産業革命の初期

【資料2】都市労働者の生活環境

農村から都市へ職を求めて人々が殺到したため、住宅供給が追いつかず、窓のない地下室や狭い長屋に密集して暮らした。上下水道も未整備で、コレラなどの感染症がたびたび流行した。

難易度:★★☆☆☆

問1 【資料1】【資料2】から読み取れる、産業革命初期(1800年〜1850年頃)のイギリス国民の生活水準に関する記述として、最も適切なものを選びなさい。

【正解:②】

解説: 資料1を見ると、青線(GDP)は上がっているのに、赤線(身長)は1800年代前半に下がっています。これは、富が増えてもそれが労働者に分配されず、劣悪な都市環境(資料2)によって健康が損なわれた「生活水準のパラドックス」と呼ばれる現象を示しています。


2. 地図から読むアフリカ分割

19世紀後半、ヨーロッパ列強は競ってアフリカを植民地化した。次の【資料3】の地図の特徴から、その分割方法の特異性を考察しなさい。

【資料3】アフリカの国境線(模式図)

直線的な国境 ※現地の地理や民族を無視

【資料4】ベルリン会議(1884年)の原則

「実効支配」の原則:
沿岸部を占領し、その地域の支配を他国に通告すれば、その内陸部も領有権が認められる。
→ 早い者勝ちで地図上に線を引いて分割した。

難易度:★★☆☆☆

問2 アフリカ諸国の国境線に「直線」が多い理由と、それが現在のアフリカに残した影響について、最も適切な説明を選びなさい。

【正解:②】

解説: ベルリン会議などで、列強は現地の事情(民族、言語、文化)を無視し、緯度・経度などを用いて機械的に線を引きました。これが現在のアフリカにおける民族紛争や内戦の遠因となっています。


3. 鉄血宰相のパズルと破綻(構造分析)

ドイツの宰相ビスマルクは、フランスを孤立させるために複雑怪奇な同盟網を築いた。しかし、彼が去った後にそのバランスが崩れ、第一次世界大戦への道が開かれた。以下の図を比較し、「何が変わったことで戦争が不可避になったのか」を考察しなさい。

【資料5】ビスマルク体制(1880年代)

孤立化

ドイツはロシア・オーストリアの両方と手を組み、フランスに味方を作らせない。

【資料6】ビスマルク引退後の変化(1890年代〜)

露仏同盟 ドイツ包囲網の完成

ドイツがロシアとの条約更新を拒否したため、ロシアはフランスと手を組んだ。

難易度:★★★★☆

問3(考察) ビスマルクが最も恐れていた事態とは何か。【資料5】と【資料6】の構造変化から読み取れる、第一次世界大戦におけるドイツの戦略的失敗として最も適切な記述を選びなさい。

【正解:②】

解説: ビスマルク外交の肝は「フランスの孤立化」と「ロシアを味方につけておくこと」でした。しかし、後の皇帝ヴィルヘルム2世がロシアとの条約更新を拒否したため、孤立していたフランスはロシアに接近し「露仏同盟」が成立。これによりドイツは、西のフランス・東のロシアという2つの強国に挟まれる(二正面作戦を強いられる)最悪の事態に陥りました。


4. 紙幣の暴走(1923年ドイツ)

第一次世界大戦後のドイツ(ヴァイマル共和国)では、パン1個が数千億マルクになるという信じがたいインフレが発生した。なぜ政府は紙幣を刷り続け、経済を崩壊させたのか。その「負の連鎖」を読み解きなさい。

【資料7】パン1個の値段の推移

時期値段(マルク)
1922年160
1923年 夏100,000
1923年 11月200,000,000,000
(2000億)

【資料8】インフレの引き金(ルール占領)

① 賠償金が払えない フランス軍が工業地帯 (ルール地方)を占領 ② 受動的抵抗 「働かずに抵抗せよ!」 工場ストライキ発生 ③ 政府の苦肉の策 働かない労働者の給料を お札を刷って支払う 結果 モノ不足 + お札激増 = ハイパーインフレ
難易度:★★★★★

問4(考察) 【資料8】のプロセスに基づき、なぜこの時期のドイツで「ハイパーインフレ(物価の制御不能な上昇)」が止まらなくなったのか、その経済的なメカニズムとして最も正確な記述を選びなさい。

【正解:②】

解説(超重要): インフレの基本原理は「モノの量 < お金の量」です。
1. モノ不足: ルール地方(工業地帯)の占領とストライキ(受動的抵抗)により、石炭や製品の生産がストップしました。
2. お金の過剰: しかし政府は、ストライキ中の労働者の生活を支えるため、裏付けのない紙幣を輪転機フル稼働で刷りまくって配りました。
3. 結論: 市場にモノはないのに、紙幣だけが溢れかえった結果、紙切れ同然になるまで価値が暴落しました。

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この記事を書いた人

旧ブログ『Mr.ガジェットの日記』をBloggerで立ち上げ、その後当ブログ『ミスターガジェット』を創設。
Twitterのフォロワーは2500人を突破。
紅白出場経験のあるミリオンシンガー小野正利氏に師事するなど音楽活動にも力をいれている。

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