資料問題①:現代社会・情報分析 実力テスト(思考力型)
1. J-POP市場と音楽消費の変化
次の会話文と資料(I)〜(III)を読み、あとの問いに答えなさい。
先生:最近のヒットチャートを見ると、楽曲の構造そのものが変化しているね。
生徒:はい。イントロ(前奏)が極端に短い曲が増えた気がします。
先生:その通り。それは音楽の「聴かれ方」が変わったことが大きく影響しているんだ。
(I) 音楽売上推移(億円)
| 年 | CD等生産金額 | 有料配信(サブスク等) |
|---|---|---|
| 2013 | 2,704 | 417 |
| 2016 | 2,457 | 529 |
| 2019 | 2,291 | 706 |
| 2022 | 2,023 | 1,050 |
(II) ヒット曲イントロ秒数平均
(III) 現代のユーザー行動と収益構造
- ア:TikTok等の動画では、曲の盛り上がる「サビ」部分のみが切り抜かれて使われることが多い。
- イ:定額制聴き放題(サブスク)では、数千万曲の中から気に入らない曲はすぐに飛ばされる。開始5秒以内のスキップ率は約25%に達する。
- ウ:サブスクは「1回再生されるごとに約◯円」という収益モデルであるため、曲が飛ばされずに再生される回数が重要になる。
- エ:CD購入者の7割は、楽曲そのものよりも「特典(握手会参加券・限定グッズ)」を目的に購入している。
(1) 資料(I)(II)および資料(III)イの事実から導き出される、イントロが短くなった理由として最も論理的なものは?(思3)
【正解:イ】
解説: 知識問題ではなく、資料の結合問題です。
1. 資料(I)で「サブスク市場の拡大」を確認。
2. 資料(III)イで「気に入らないと即スキップされる」行動を確認。
3. これらを合わせると、イントロを長くすることのリスク(聴かれる前に飛ばされる)が高まったと推論できます。
(2) 資料(III)ウの収益モデルを踏まえたとき、ストリーミング時代に不利になる(避けるべき)楽曲構成はどれか。誤っているものを選びなさい。(思2)
【正解:ウ】
解説: 資料(III)ウより、収益は「再生回数」に依存します。またイより「気に入らないと即スキップ」されます。冒頭に長い無音を入れると、ユーザーは「音が鳴らない」と思って即座にスキップするため、再生回数(収益)につながらない可能性が極めて高くなります。
2. サッカービジネスと経済格差
(I) 年間放映権料収入と言語人口
参考データ:
・英語の実用話者数:約15億人(世界中)
・日本語の実用話者数:約1.2億人(ほぼ国内のみ)
・イギリスの人口:約6,700万人 / 日本の人口:約1億2,000万人
(II) 用語解説:ソフトパワー
【ソフトパワー】
軍事力や経済制裁といった強制的な力(ハードパワー)ではなく、その国の「文化」や「価値観」の魅力によって、他国からの信頼や好感度を獲得し、国際的な影響力を高めようとする力のこと。
(例:アニメ、伝統文化、スポーツイベントなど)
(1) 資料(I)のグラフと参考データを見比べて、英プレミアリーグの収入が日本よりも圧倒的に多い理由として、最も矛盾がなく適切なものは?(知2)
【正解:イ】
解説: 参考データを見ます。
ア:誤り。イギリスの人口(約6,700万)は日本(約1.2億)の半分程度であり、「国内人口が多い」という説明は矛盾します。
イ:正解。英語話者は15億人おり、市場規模が桁違いです。
ウ:誤り。円安の影響はありますが、グラフの差(20倍)を説明する主因ではありません。
(2) 中東などの国々が、採算を度外視して巨額の資金で有名選手を集める理由を、資料(II)の「ソフトパワー」という概念を用いて説明しなさい。(思4)
(記述スペース)
【解答例】
スポーツという文化の魅力によって国の好感度を上げ、国際的な影響力を高めるため。
解説: 資料(II)にある「文化や価値観の魅力によって〜国際的な影響力を高める」という定義を、サッカー選手獲得という文脈に当てはめて記述すれば正解です。
3. 情報探索:GoogleからSNSへ
(I) 若年層(20代)の「飲食店検索」手段
- ■ Googleマップ・検索 (45%)
- ■ Instagram (30%)
- ■ TikTok (15%)
- ■ その他 (10%)
(II) Webメディアの収益構造と特徴
- Webサイトの収入源: 多くの無料情報サイトは、記事の周りに表示される「広告」から収入を得ている。読者がサイトを訪れ(クリックし)、ページが表示されないと収益は発生しない。
- SNSの仕組み: InstagramやTikTokは、AIが「そのユーザーが好きそうな投稿」を自動で選んでおすすめ表示する(レコメンド機能)。単なる時系列順ではない。
- ゼロクリックサーチ: Google検索結果の画面上にAIが答えを表示してしまい、ユーザーがWebサイトへのリンクをクリックせずに去ってしまう現象。
(1) 若者がGoogle検索ではなくInstagramやTikTokを使う理由として、資料(II)の内容と矛盾している(誤っている)記述はどれか。(思2)
【正解:ウ】
解説: 資料(II)に「AIが好きそうな投稿を選んでおすすめ表示する。単なる時系列順ではない」と明記されています。したがって、ウの「AIによる操作がなく」「順に表示される」という記述は資料と矛盾します。
(2) 資料(II)の「Webサイトの収入源」と「ゼロクリックサーチ」の説明を読み、AI検索の普及がメディア企業に与える影響として正しいものを選びなさい。(思2)
【正解:イ】
解説: 資料(II)に「ページが表示されないと収益は発生しない」とあります。ゼロクリックサーチは「クリックせずに去ってしまう」現象なので、当然、収益は減少するという論理的帰結になります。
コメント