1. 相対論前史とアインシュタイン
「相対」とは他との関係で成立すること(例:相対評価、相対音感)、「絶対」とは比較を必要としないこと(例:絶対評価、絶対音感)を指す。物理学においても、運動は絶対的なものか相対的なものかが長年の議論であった。
ガリレオ・ガリレイの相対性原理
17世紀、ガリレオは「動いている船のマストから石を落とす実験」を思考し、慣性の法則を見出した。船の中の観測者にとっては石は真下に落ち、岸の観測者からは放物線を描いて見えるが、どちらも物理法則(落下)としては同じである。
「等速直線運動をしている慣性系(船の中など)においては、静止している時と同じ物理法則が成り立つ。実験によって自分が動いているか止まっているかを区別することはできない。」
粒子説 vs 波動説
| 提唱者 | 説 | 根拠 |
|---|---|---|
| ニュートン | 粒子説 | 光は直進し、影ができるから。 |
| ホイヘンス | 波動説 | 光同士がぶつかってもすり抜ける(干渉する)から。 |
1850年、フーコーが回転鏡を用いて水中の光速度を測定し、空気中より遅いことを証明したことで、波動説が勝利した。
エーテルの探索
波には媒質が必要である(海なら水、音なら空気)。光が波なら、宇宙空間を満たす媒質があるはずだと考えられ、それを「」と名付けた。
マイケルソン・モーレーの実験 (1887年):地球の公転運動を利用して「エーテルの風」を検出しようとした精密実験。しかし、どの方向でも光速は変わらなかった。これは物理学最大の謎となった。
不遇の天才の誕生
- 1879年3月14日:ドイツ・ウルム生まれ。幼少期は言葉が遅く「(のろま)」と呼ばれた。5歳でに感動し、科学に目覚める。
- 学生時代:チューリッヒ工科大学に進むも、成績は平凡。友人ハビヒト、ソロヴィーヌと「アカデミー・オリンピア」を結成し哲学を議論した。
- 1902年:就職難の末、ベルンのに就職。暇を見つけては引き出しに隠した計算用紙で研究を行った。
1905年:奇跡の年 (Annus Mirabilis)
26歳の時、物理学の常識を覆す3つの論文を立て続けに発表した。
- (光電効果):光を粒子(光子)として扱い、ノーベル賞の受賞理由となった。
- :原子・分子の実在を理論的に証明した。
- :時間と空間の概念を統一した。
栄光と苦悩
- 1919年:一般相対性理論の予言(光の湾曲)が皆既日食観測(エディントン隊)で実証され、世界的スターになる。
- 1921年:ノーベル物理学賞受賞。授賞理由は相対論ではなく「光電効果の発見」。(相対論は当時まだ議論が多かったため)
- 1922年:日本訪問。日本郵船「」の船上で受賞の報を受ける。改造社(雑誌『改造』)の招聘。熱狂的歓迎を受ける。
- 1933年:ナチスの迫害を逃れ、米国プリンストン高等研究所へ。
- 1939年:シラードの要請でルーズベルト大統領に原爆開発を促す手紙に署名(マンハッタン計画)。後に「生涯最大の過ち」と悔やむ。
- 1955年:バートランド・ラッセルと共に核廃絶を訴える「」を発表。同年死去。
マイケルソン・モーレーの実験結果(光速が変化しない)を受け入れ、エーテルを「不要」として捨て去ることから理論は始まった。
特殊相対性理論の2大原理
- 特殊相対性原理:互いに等速直線運動をするすべての慣性系において、物理法則は同じ形式で成り立つ。
- 光速度不変の原理:真空中の光速 \(c\)(約30万km/s)は、光源や観測者の運動状態に関わらず常にである。
光速が一定であるため、「同時」という概念すら絶対ではなくなる。
思考実験(列車内の光):
列車の中央から前方と後方に同時に光を発射する。
・列車内の人:光は等距離を進むので、前後同時に壁に当たる。
・地上の人:光速は一定だが、後方の壁は光に近づき、前方の壁は光から逃げるため、「後方の壁に先に当たる」と観測される。
結論:ある人にとっての同時は、別の人にとっては同時ではない。
光時計の思考実験
床と天井に鏡がある列車内で、光を往復させて時間を計る「光時計」を考える。
- 列車内の人:光は真上・真下に往復する(距離は短い)。
- 地上の人:列車が動いているため、光は斜めジグザグに進む(距離は長い)。
光速は一定なので、距離が長い分、地上の人から見ると時間が長くかかる(=時計がゆっくり進む)ことになる。
(\(T\):静止している時計の時間、\(t\):動いている時計の時間)
※ \(\sqrt{1-(v/c)^2}\) は必ず1より小さくなるため、\(t > T\) となる。
動いている物体は、進行方向に長さが縮んで見える。
トンネルのパラドックス
長さ100mの列車が、長さ80mのトンネルを通過できるか?(速度は光速に近いとする)
- 地上から見ると:列車が縮むので、一瞬トンネルの中にすっぽり入る。
- 列車から見ると:トンネルが縮むので、はみ出してしまう。
解決:同時刻の相対性により、「入り口を入った瞬間」と「出口を出た瞬間」のタイミングが観測者によってずれるため、物理的な矛盾は生じない。
物体は速く動くほど質量(動きにくさ)が増大する。光速 \(c\) に近づくと質量は無限大に発散するため、質量のある物体は決して光速に達することはできない。
質量とエネルギーは等価である。わずか1円玉(1g)の質量が消滅すると、約90兆ジュール(石油7億リットル分)のエネルギーになる。これが原子力発電や太陽のエネルギー源の原理である。
ニュートン力学の座標変換(ガリレイ変換:\(x’ = x – vt, t’ = t\))では、光速不変が成り立たない。これを修正する。
光速不変の原理より、光の波面の方程式 \(x^2 – (ct)^2 = 0\) は、別の慣性系でも \(x’^2 – (ct’)^2 = 0\) でなければならない。これを満たす一次変換を求めると:
\(\gamma = \frac{1}{\sqrt{1-\beta^2}}\) (ローレンツ因子)
ミンコフスキー時空:時間 \(ct\) と空間 \(x,y,z\) を合わせた4次元空間。不変量 \(s^2 = (ct)^2 – (x^2+y^2+z^2)\) が定義される。時空図では光は45度の線(世界線)を描く。
ある系から見て速度 \(v\) で動く乗り物から、さらに速度 \(u\) で物体を投げた場合、静止系から見た速度 \(V\) は単純な足し算 \(V = v + u\) ではない。
- もし \(v, u\) が光速よりはるかに小さければ、分母はほぼ1となり、ガリレイ変換 \(V \approx v+u\) に戻る(対応原理)。
- もし \(u = c\) (光を発射)ならば、\(V = \frac{v+c}{1+v/c} = \frac{c(v+c)}{c+v} = c\) となり、光速に何を足しても光速のままであることが数学的に示される。
特殊相対論は「慣性系(等速運動)」に限られていた。アインシュタインはこれを「加速度系」や「重力」まで拡張した。
等価原理
「重力」と「加速度による慣性力」は局所的に区別がつかない。
(思考実験:宇宙空間でロケットが加速上昇すると、中の人は床に押し付けられる力を感じる。これは地上の重力と全く同じ感覚である)
重力の正体=時空の幾何学
質量(エネルギー)が存在すると、その周囲の時空(時間と空間)が。物体はそのゆがんだ時空の中を、抵抗の最も少ない経路()を通って運動する。これが重力である。
\( R_{\mu\nu} – \frac{1}{2}Rg_{\mu\nu} = \frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} \)
(左辺:時空の曲率、右辺:物質のエネルギー分布)
- 水星の近日点移動:水星の軌道がニュートン力学の計算より100年で43秒角だけ余分にずれる謎を、時空の歪みによって完璧に説明した。
- 重力レンズ効果:重い天体のそばを通る光が曲がる現象。1919年の日食観測でエディントンらが確認し、アインシュタインの正しさを証明した。
- 重力による時間の遅れ:重力が強い場所(時空の歪みが大きい場所)ほど時間は進む。(GPS衛星は地上の時計より早く進むため補正が必要)
- 重力波:時空の歪みが波として伝わる現象。2016年にLIGOが初検出に成功。
双子のパラドックス
双子の兄がロケットで宇宙旅行し、弟が地球に残る。再会した時、どちらが若いか?
- 特殊相対論だけだと「お互いに相手の時間が遅れる」ため矛盾に見える。
- 実際には、兄はUターンする際に加速度運動(=重力を受ける状態と等価)を経験する。
- 等価原理により、加速度(重力)を受けている間の時間は遅れるため、兄の方が歳をとっていない(若くなる)という結論になる。
- ハッブルの法則 (1929):遠くの銀河ほど高速で遠ざかる(距離に比例)。これは宇宙全体がしていることを示す。
- アインシュタインの不覚:かつて宇宙を不変にするために重力場方程式に「(宇宙定数 \(\Lambda\))」を導入したが、ハッブルの発見後に撤回した。(※現在は加速膨張を説明するダークエネルギーとして復活)
- ビッグバン理論 (ガモフ):宇宙は超高温・超高密度の火の玉から始まったとする説。
対立説:ホイルらの「」(宇宙は永遠に不変)。 - 決定的証拠:1965年、ペンジアスとウィルソンによる (CMB) の発見。全天から等方的にやってくる約3Kのマイクロ波は、ビッグバンの残り火である。
インフレーション理論
ビッグバン理論には「平坦性問題(なぜ宇宙は平坦か)」や「地平線問題(なぜ離れた場所の温度が同じか)」などの謎があった。
これを解決するために、佐藤勝彦やグースは、ビッグバン直前に真空のエネルギー(宇宙項)によって宇宙が指数関数的に急膨張したとするインフレーション理論を提唱した。
宇宙の始まり(無からの創成)
物理法則が破綻する「特異点」をどう乗り越えるか。
- ビレンケン:「無」からの創成。物質も空間もない「無」の状態から、量子力学的なによって、エネルギーの壁を越えて宇宙がポッと生まれた。
- ホーキング:「の時間」を導入。時間を複素数に拡張することで、宇宙の始まりの尖った点(特異点)をなくし、境界のない滑らかな底(無境界仮説)とした。
| あ行 | |
|---|---|
| アインシュタイン | (Albert Einstein, 1879-1955) 相対性理論の創始者。1921年ノーベル物理学賞受賞。 |
| アインシュタイン方程式 | 一般相対性理論の基本方程式。左辺は時空の幾何学(曲率)を、右辺は物質のエネルギー分布を表す。 |
| アカデミー・オリンピア | アインシュタインがベルン時代に友人ハビヒト、ソロヴィーヌと結成した自主的な勉強会。 |
| イーサ(エーテル) | (Aether) 19世紀まで信じられていた、光を伝える仮想的な媒質。マイケルソン・モーレーの実験で検出されず、特殊相対論により不要とされた。 |
| インフレーション理論 | ビッグバン直前に宇宙が指数関数的に急激な膨張を起こしたとする理論。佐藤勝彦やグースが提唱。平坦性問題などを解決する。 |
| ウィルソン | (Robert Wilson) ペンジアスと共に宇宙背景放射を発見したアメリカの物理学者。ノーベル賞受賞。 |
| ウルム | ドイツ南部の都市。アインシュタインの生誕地。 |
| エディントン | (Arthur Eddington) イギリスの天文学者。1919年の皆既日食観測隊を率いて一般相対性理論を実証した。 |
| エネルギー・運動量テンソル | 物質や場のエネルギー密度、運動量密度、応力などをまとめた物理量。アインシュタイン方程式の右辺(ソース)となる。 |
| エントロピー | 乱雑さの尺度。宇宙のエントロピーは増大し続ける(熱力学第二法則)。 |
| 横ドップラー効果 | 光源が観測者の視線に対して垂直に運動している場合でも、時間の遅れにより振動数が変化して見える現象。 |
| か行 | |
| 解 | アインシュタイン方程式を満たす時空の計量。シュバルツシルト解、フリードマン解などがある。 |
| 外部解 | 天体の外部(真空領域)におけるアインシュタイン方程式の解。 |
| ガモフ | (George Gamow) ビッグバン理論(火の玉宇宙論)の提唱者。元素合成の理論などを展開した。 |
| ガリレイ変換 | ニュートン力学における座標変換。時間は絶対的であり、速度は単純な足し算になる。\(x’=x-vt\)。 |
| ガリレオ・ガリレイ | 相対性原理(力学)を初めて提唱したイタリアの科学者。慣性の法則を発見。 |
| 慣性系 | 慣性の法則が成り立つ座標系。静止または等速直線運動をしている系。 |
| 慣性質量 | ニュートンの運動方程式 \(F=ma\) における質量 \(m\)。加速しにくさを表す。 |
| 奇跡の年 | (Annus Mirabilis) 1905年。アインシュタインが「光量子論」「ブラウン運動」「特殊相対性理論」の3つの革命的論文を発表した年。 |
| 北野丸 | 1922年、アインシュタインが来日する際に乗船した日本郵船の船。 |
| 基本原理 | 理論を構築するための出発点となる仮定。特殊相対論では「特殊相対性原理」と「光速度不変の原理」。 |
| 虚数の時間 | ホーキングが導入した概念。時間を複素数に拡張することで、宇宙の始まりにおける特異点を数学的に回避した(無境界仮説)。 |
| 空間の曲率 | 空間の曲がり具合を表す量。正なら閉じた宇宙、負なら開いた宇宙、ゼロなら平坦な宇宙となる。 |
| グース | (Alan Guth) アメリカの物理学者。インフレーション理論の提唱者の一人。 |
| クエーサー | 遥か彼方に存在する非常に明るい天体。巨大ブラックホールがエネルギー源と考えられている。 |
| 計量テンソル | (Metric Tensor) 時空の幾何学的性質(距離や角度の測り方)を決定する量。\(g_{\mu\nu}\)。 |
| 光電効果 | 物質に光を当てると電子が飛び出す現象。アインシュタインは光量子論でこれを説明し、ノーベル賞を受賞した。 |
| 光量子論 | 光を波としてだけでなく、エネルギーを持つ粒子(光子)としても捉える考え方。 |
| 光速度不変の原理 | 真空中の光速は、光源の運動や観測者の運動に関わらず一定(\(c \approx 3.0 \times 10^8\) m/s)であるという原理。 |
| 固有時 | その物体と一緒に運動する時計で測った時間。 |
| コペンハーゲン解釈 | 量子力学の観測問題に関する標準的な解釈。ボーアらが中心となって構築した。 |
| さ行 | |
| 佐藤勝彦 | 日本の物理学者。インフレーション理論をグースと同時期に独立して提唱した。 |
| 事象 | (Event) 時空上の一点。時刻と場所の組 \((t, x, y, z)\) で指定される。 |
| 事象の地平線 | (Event Horizon) ブラックホールの境界。ここより内側からは光さえ脱出できず、外部との因果関係が断たれる。 |
| 質量とエネルギーの等価性 | \(E=mc^2\)。質量はエネルギーの一形態であり、相互に変換可能であること。 |
| 重力質量 | 万有引力の法則における質量。重力の源、または重力を受ける度合いを表す。等価原理により慣性質量と等しい。 |
| 重力波 | 時空の歪みが波として光速で伝わる現象。2016年にLIGOによって初検出された。 |
| 重力崩壊 | 星が自らの重力を支えきれずに収縮する現象。超新星爆発やブラックホール形成の原因となる。 |
| 重力レンズ | 巨大な質量の重力によって時空が歪み、背後にある天体からの光の進路が曲げられる現象。 |
| シュバルツシルト半径 | 天体がブラックホールになるために収縮しなければならない限界の半径。\(R_s = 2GM/c^2\)。 |
| 真空のエネルギー | 何もない空間が持つエネルギー。インフレーションや宇宙の加速膨張(ダークエネルギー)の原因とされる。 |
| 水星の近日点移動 | 水星の軌道がニュートン力学の予測からずれる現象。一般相対性理論によって完全に説明された。 |
| スペクトル | 光を波長ごとに分けたもの。赤方偏移の測定などに用いられる。 |
| 世界線 | (World line) ミンコフスキー時空図において、粒子が時間経過とともに描く軌跡。 |
| 絶対時間・絶対空間 | ニュートン力学における、誰にとっても変化しない固定された時間と空間の概念。 |
| 測地線 | 曲がった時空における2点間の最短距離(正確には停留値)を結ぶ線。重力のみを受ける物体は測地線を描く。 |
| た行 | |
| ダークエネルギー | 宇宙の加速膨張を引き起こしているとされる未知のエネルギー。宇宙全体のエネルギーの約7割を占める。 |
| ダークマター | (暗黒物質) 光を出さず、重力相互作用によってのみ存在が確認される未知の物質。銀河の回転曲線問題などを説明する。 |
| 同時刻の相対性 | 離れた2地点での出来事が「同時」かどうかは、観測者の運動状態によって異なるという概念。 |
| 等価原理 | 局所的には、重力と加速度による慣性力は区別がつかないという一般相対論の基礎原理。 |
| 特許局 | スイスのベルンにある役所。アインシュタインはここで働きながら相対性理論を完成させた。 |
| 特異点 | (Singularity) ビッグバンの始まりやブラックホールの中心など、物理量が無限大になり物理法則が破綻する点。 |
| トンネル効果 | 量子力学において、粒子がエネルギー障壁を確率的に通り抜ける現象。ビレンケンの宇宙創成論で用いられる。 |
| 特殊相対性原理 | すべての慣性系において物理法則は同じ形式で記述されるという原理。 |
| な行 | |
| ニュートン | (Isaac Newton) 万有引力の法則や運動の3法則を確立した物理学者。光の粒子説を唱えた。 |
| 熱的死 | 宇宙のエントロピーが最大になり、温度差がなくなり、あらゆる活動が停止する宇宙の終焉のシナリオ。 |
| は行 | |
| ハッブル | (Edwin Hubble) 銀河の後退速度と距離の関係(ハッブルの法則)を発見し、宇宙膨張を示した天文学者。 |
| ハッブルの法則 | 遠方の銀河の後退速度は、その距離に比例するという法則。\(v = H_0 d\)。 |
| パグウォッシュ会議 | 科学者による核廃絶と平和のための国際会議。湯川秀樹や朝永振一郎も参加。 |
| パラドックス | 一見矛盾しているように見える問題。相対論では「双子のパラドックス」や「トンネルのパラドックス」などが有名だが、理論内で解決される。 |
| 非ユークリッド幾何学 | 曲がった空間を扱う幾何学(リーマン幾何学など)。一般相対性理論の数学的基礎。 |
| ビッグバン理論 | 宇宙は超高温・超高密度の状態から始まり、膨張とともに冷却したとするモデル。 |
| 平坦性問題 | 現在の宇宙の密度が臨界密度に極めて近く、空間が平坦であることの不自然さ。インフレーションで説明される。 |
| ビーダーマイヤー | アインシュタインの幼少期のあだ名。「のろま」「正直者」といった意味。 |
| フィゾー | 1849年、回転歯車を用いて地上の光源で光速度を測定した人物。 |
| フーコー | 1850年、回転鏡を用いて水中の光速度を測定し、光が波動であることを示した人物。 |
| ブラックホール | 極めて強い重力のために、光さえも脱出できない天体。シュバルツシルト解として予言された。 |
| ブラウン運動 | 液体中の微粒子が不規則に動く現象。アインシュタインが理論的に説明し、原子の実在を決定づけた。 |
| プリンストン高等研究所 | アメリカの研究所。アインシュタインがナチスを逃れて移籍し、晩年を過ごした場所。 |
| ペンジアス | (Arno Penzias) ウィルソンと共に宇宙背景放射を発見した物理学者。ノーベル賞受賞。 |
| ボーア | (Niels Bohr) 量子力学の育ての親。「コペンハーゲン解釈」を巡りアインシュタインと論争した。 |
| ホイヘンス | (Christiaan Huygens) 光の波動説を唱えたオランダの物理学者。 |
| ホイル | (Fred Hoyle) 定常宇宙論を提唱し、ビッグバン理論に反対したイギリスの科学者。「ビッグバン」という言葉の名付け親(皮肉として)。 |
| ホーキング | (Stephen Hawking) 特異点定理やホーキング放射で知られる車椅子の物理学者。虚数の時間を導入した。 |
| ま行 | |
| マイケルソン・モーレーの実験 | 1887年、エーテルに対する地球の運動を検出しようとした実験。結果は「検出されず」で、相対性理論への道を開いた。 |
| マクスウェル方程式 | 電磁気学の基礎方程式。ガリレイ変換に対して共変ではないことが、相対性理論への端緒となった。 |
| マンハッタン計画 | アメリカの原爆開発計画。アインシュタインの手紙がきっかけの一つとなったが、彼自身は開発には参加していない。 |
| ミレーバ | (Mileva Maric) アインシュタインの最初の妻。チューリッヒ工科大学の同級生で、物理学の議論相手でもあった。 |
| ミンコフスキー時空 | 時間と空間を統一的に扱う4次元の幾何学的空間。特殊相対性理論の舞台。 |
| 無境界仮説 | ホーキングが提唱した、宇宙の始まりに境界(特異点)はないとする仮説。虚数の時間の導入による。 |
| ら行 | |
| ラッセル | (Bertrand Russell) イギリスの哲学者。アインシュタインと共に核廃絶を訴える宣言を出した。 |
| リーマン幾何学 | 曲がった空間を扱う幾何学。一般相対性理論の数学的記述に用いられる。 |
| リッチ・テンソル | 時空のゆがみ具合を表す量の一つ。アインシュタイン方程式に含まれる。 |
| レーマー | 1676年、木星の衛星イオの食を利用して初めて光速度を測定した人物。 |
| ローレンツ収縮 | 運動する物体が、その進行方向に縮んで観測される現象。 |
| ローレンツ変換 | 特殊相対性理論における、慣性系間の座標変換式。光速不変を満たす。 |
次の記述の空欄 [ 1 ] 〜 [ 15 ] に入る最も適切な語句、人名、または数値を答えよ。
- 1905年はアインシュタインの「」と呼ばれる。
- ノーベル物理学賞の受賞理由は「(光電効果)」の発見である。
- かつて光の媒質として宇宙に満ちていると考えられていた物質はである。
- 特殊相対性理論の2つの原理は、特殊相対性原理との原理である。
- 静止質量 \(m\) の物体が持つエネルギーは \(E = \) である。
- 運動する物体の進行方向の長さが縮んで見える現象をという。
- 一般相対性理論において、重力と加速度は区別できないとする原理をという。
- 重力とは時空の(曲がり)である。
- 重力が光を曲げる現象(効果)は、1919年の観測で実証された。
- ビッグバン理論を提唱した物理学者はである。
- ビッグバンの決定的証拠となった電波をという。
- 宇宙初期の急激な膨張を理論という。
- 宇宙の始まりについて、ビレンケンは「からの創成」を説いた。
- ブラックホールの表面(境界)をという。
- アインシュタインが「生涯最大の不覚」として撤回したが、現在復活している項はである。
静止している観測者から見て、光速の80%(\(v=0.8c\))で飛行するロケットがある。以下の問いに答えよ。
(1) ローレンツ因子 \(\gamma = \frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}\) の値を計算せよ。(6点)
(2) ロケットの中で10秒経過したとき、静止している観測者の時計では何秒経過しているか。(8点)
(3) アインシュタインの速度合成則 \(V = \frac{v+u}{1+\frac{vu}{c^2}}\) を用いて、このロケットから前方へ \(0.5c\) で発射されたミサイルの、静止観測者から見た速度を求めよ。(8点)
(1) \(\gamma = 1/\sqrt{1-0.64} = 1/\sqrt{0.36} = 1/0.6 = 5/3 \approx 1.67\)
(2) \(t = \gamma \tau = (5/3) \times 10 = 50/3 \approx 16.7\) 秒
(3) \(V = \frac{0.8c + 0.5c}{1 + 0.4} = \frac{1.3c}{1.4} = \frac{13}{14}c \approx 0.93c\)
「双子のパラドックス」について、以下のキーワードをすべて用いて、なぜパラドックス(矛盾)が解消されるのか論理的に説明せよ。
【 キーワード: 特殊相対性理論、 加速度運動、 慣性系、 等価原理(または重力) 】
特殊相対性理論だけでは、互いに相手の時間が遅れるため矛盾に見える。しかし、宇宙旅行をした双子はUターンの際に加速度運動を行うため慣性系には留まらない。一般相対性理論の等価原理によれば、加速度(みかけの重力)を感じている間は時間が遅く進むため、再会時には旅行者の方が若くなっていることで矛盾は解消される。
次の記述の空欄を埋めよ。
- 光の速度は秒速約kmである。
- アインシュタインの出身国はである。
- アインシュタインが特許局時代に結成した勉強会をという。
- マイケルソン・モーレーの実験は、地球の運動を利用してエーテルを検出しようとした。
- 動く時計の進みが遅くなる現象を時間の(Time Dilation)という。
- 一般相対論の方程式は方程式と呼ばれる。
- 一般相対論の証拠の一つは、の近日点移動である。
- 曲がった時空における最短距離を結ぶ線をという。
- 光さえ脱出できない天体をという。
- ブラックホールになるための限界半径を半径という。
- 遠くの銀河ほど高速で遠ざかる法則をの法則という。
- 定常宇宙論を唱え、ビッグバン理論に反対した科学者はである。
- インフレーション理論を提唱した日本人はである。
- ホーキングは特異点を回避するためにの時間を導入した。
- 1955年の平和宣言は・アインシュタイン宣言と呼ばれる。
(1) \(E=mc^2\) の式が意味することを簡潔に述べよ。(6点)
(2) 1円玉(1g)が完全にエネルギーに変わった場合、何ジュールになるか。有効数字1桁で答えよ。(\(c = 3.0 \times 10^8\) m/s)(8点)
(3) トンネルのパラドックス(ガレージのパラドックス)において、列車側と地上側で矛盾が生じない理由を「同時刻」という言葉を使って説明せよ。(8点)
(1) 質量はエネルギーの一形態であり、物質が消失すると莫大なエネルギーに変換されること(等価性)。
(2) \(E = (1 \times 10^{-3}) \times (3.0 \times 10^8)^2 = 9.0 \times 10^{13}\) J
(3) 特殊相対性理論では、離れた場所での出来事の「同時刻」は観測者によって異なる。地上からは「列車が縮んで入った」、列車からは「トンネルが縮んで短くなった」と見えるが、前後ゲートが閉まるタイミングが双方でずれるため、物理的な矛盾は生じない。
インフレーション理論は、ビッグバン理論が抱えていたどのような問題を解決するために提唱されたか。2つの問題の名称を挙げ、それぞれ簡潔に説明せよ。
1. 平坦性問題:現在の宇宙の密度が臨界密度に極めて近く、空間が平坦であることの不自然さ。
2. 地平線問題:光速でも情報伝達が間に合わないほど離れた宇宙の領域同士で、背景放射の温度が均一であることの謎。
これらは初期宇宙の急激な膨張によって説明される。
正しい記述には○、誤っている記述には×をつけよ。
- アインシュタインは相対性理論でノーベル賞を受賞した。( )
- 光速不変の原理は、マイケルソン・モーレーの実験結果と矛盾しない。( )
- 特殊相対性理論では、時間は誰にとっても共通の絶対的なものである。( )
- \(E=mc^2\) は、エネルギー保存則が質量を含めて成り立つことを示している。( )
- 一般相対性理論によれば、重力が強い場所では時間は速く進む。( )
- アインシュタインは量子力学の確率解釈に賛成し、「神はサイコロを振る」と言った。( )
- 1919年の日食観測で、星の光が曲がることが確認された。( )
- ビッグバン理論の「火の玉宇宙」という考えは、ガモフが提唱した。( )
- 宇宙背景放射は、ビッグバン理論の否定的な証拠となった。( )
- ハッブルの法則は、宇宙が収縮していることを示している。( )
- インフレーション理論では、宇宙項(真空のエネルギー)が斥力として働いたとされる。( )
- ビレンケンの宇宙創成論では、トンネル効果が重要な役割を果たす。( )
- アインシュタイン方程式の右辺は、時空の曲率を表している。( )
- ミンコフスキー時空は4次元の空間である。( )
- 光速に近いロケットの中では、進行方向の長さが伸びて見える。( )
1.× 2.○ 3.× 4.○ 5.×(遅くなる) 6.×(反対した) 7.○ 8.○ 9.×(決定的な証拠) 10.×(膨張) 11.○ 12.○ 13.×(左辺が曲率、右辺はエネルギー) 14.○ 15.×(縮む)
ローレンツ変換の式:
\[ x’ = \gamma (x – vt), \quad t’ = \gamma (t – \frac{v}{c^2}x) \]
について、以下の問いに答えよ。
(1) \(v\) が光速 \(c\) に比べて極めて小さい場合(\(v/c \to 0\))、この式はどのような変換式になるか。(10点)
(2) その変換式の名称を答えよ。(12点)
(1) \(v/c \to 0\) のとき、\(\gamma \to 1, v/c^2 \to 0\) となるため、
\(x’ = x – vt, \quad t’ = t\) となる。
(2) ガリレイ変換
一般相対性理論において、エレベーターを使った思考実験から導かれる「等価原理」の内容を説明し、そこから結論付けられる「光の振る舞い」について述べよ。
宇宙空間で加速上昇するエレベーターの中では、床に押し付けられる慣性力を感じるが、これは地上で静止している時に感じる重力と区別がつかない(等価原理)。加速するエレベーター内を横切る光は放物線を描いて曲がって見えるため、等価である重力場においても、光は重力によって曲がって進むという結論が導かれる。
次の説明に該当する人物名や用語を答えよ。
- 木星の衛星イオの食を利用して光速を測定した人物。
- 水中の光速度を測定し、光が波動であることを決定づけた人物。
- アインシュタインの幼少期のあだ名で「のろま」を意味する言葉。
- アインシュタインが卒業したスイスの大学。
- アインシュタインが1902年に就職したベルンの職場。
- 1905年に発表された、原子の実在を証明した論文のテーマ。
- 皆既日食の観測隊を率いて、一般相対性理論を実証したイギリスの天文学者。
- アインシュタインが1922年に訪問したアジアの国。
- 量子力学の確率解釈を巡り、アインシュタインと論争した物理学者。
- ナチス政権下でアインシュタインが亡命したアメリカの研究所。
- アインシュタインに原爆開発を進言するよう促した物理学者。
- 戦後、アインシュタインと共に核廃絶宣言を出した哲学者。
- 「定常宇宙論」を唱え、ビッグバン理論に反対したイギリスの科学者。
- 宇宙背景放射を発見した2人の科学者のうちの1人。
- インフレーション理論を提唱したアメリカの物理学者(佐藤勝彦と共に)。
1.レーマー 2.フーコー 3.ビーダーマイヤー 4.チューリッヒ工科大学 5.特許局 6.ブラウン運動 7.エディントン 8.日本 9.ボーア 10.プリンストン高等研究所 11.シラード 12.ラッセル 13.ホイル 14.ペンジアス(またはウィルソン) 15.グース
光時計の思考実験を用いて、動いている時計が遅れる理由を図解的に説明せよ。文章中に「光速度不変」「移動距離」という言葉を含めること。
電車の中で床から天井へ光を往復させる光時計を考える。電車内の観測者にとって光は真上・真下に移動するが、地上の観測者から見ると、電車が動いているため光は斜めに進むことになる。光速度不変の原理より、光の速さはどちらから見ても同じであるため、斜めに進む分だけ光の移動距離が長くなる地上の観測者にとっては、光が往復するのにかかる時間が長くなる。つまり、動いている時計はゆっくり進むように見える。
アインシュタイン方程式 \( R_{\mu\nu} – \frac{1}{2}Rg_{\mu\nu} = \frac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu} \) の左辺と右辺は、それぞれ物理的に何を表しているか。簡潔に説明せよ。
左辺は「時空の幾何学(曲率、ゆがみ具合)」を表し、右辺は「物質(エネルギー)の分布」を表している。つまり、物質がどのように時空を曲げるかを示した方程式である。
次の文章の空欄を埋めよ。
速度 \(v\) で運動する物体の質量 \(M\) は、静止質量 \(m\) を用いて \(M = \frac{m}{\sqrt{1-(v/c)^2}}\) と表される。この式に基づき、なぜ質量のある物体は光速 \(c\) に達することができないのか説明せよ。
物体の速度 \(v\) が光速 \(c\) に近づくにつれて、分母の \(\sqrt{1-(v/c)^2}\) は 0 に近づくため、質量 \(M\) は無限大に発散する。質量(動きにくさ)が無限大になるということは、それ以上加速させるために無限のエネルギーが必要になることを意味するため、光速に達することは不可能である。
「重力レンズ効果」とはどのような現象か説明せよ。また、それが一般相対性理論のどのような性質を証明するものとなったか述べよ。
重力レンズ効果とは、銀河や星などの巨大な質量が生み出す重力によって周囲の時空が歪み、その背後にある天体からの光が曲がって観測者に届く現象である。これは、重力が単なる力ではなく「時空のゆがみ」であるという一般相対性理論の核心を証明する決定的な証拠となった。
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